譜久山仁 の 第3診察室

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1週間

「先生、あと、どれくらい生きられますか?」

真っ正面から投げかけられた質問に、答えるのにしばし時間を頂きました。

がん終末期の患者さんにとって、時間ほど限りのあるものはありません。
しかし、その時間が苦痛に満ちている時は、少しでも早く時が過ぎて欲しい、と思い、そうでない時には一日でも時が長くあって欲しい、と思います。

「今、何をされたいですか?」

質問の真意が知りたくて、質問で答えました。

「お世話になった方に、お礼がしたいです。」

最も優先することとして心に置いておられるのでしょう、ためらうことない返事が返ってきました。

「どの位生きておられるのかを正確に予測するのは難しいですが、僕がこれまで診させて頂いたことから、判断してお伝えしますね。」

頷かれるのを確認して、もし自分が告げられる立場になったときのことを考えながら、お伝えしました。

「残念ながら、生きておられる期間は月の単位ではなく、週の単位です。他の方とお話ができたりするのは1週間くらいでしょう。」

少し表情が硬くなったように見えましたが、すぐにお返事が返ってきました。
「わかりました。それまでにお世話になった方にお礼ができるようにします。」

それからのご本人とご家族の動きはとても早く、手紙やビデオなどでお礼のメッセージをまとめていきました。

ご家族へのお礼のメッセージもあり、こればかりはご家族に協力してもらいにくいとのことで病院スタッフが協力して手紙を書きした。亡くなられた後に見て欲しいのか、ご本人の上着のポケットに大事にしまわれました。

亡くなられる数日前に、ご家族からもご本人へお礼のメッセージが届けられ、微笑みながら受け取られました。

意識が無くなる直前に、病院で治療を受けられたことの感謝を述べられ、ご家族に見守られて静かに息を引き取られました。

なんて豊かな人生の幕引きなのだろう、と、目の奥も心の奥も熱くなりながら看取りをさせて頂きました。

素晴らしい最期の時間を、医師として診させて頂いたことに感謝です。
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by fkymhts | 2014-03-07 13:35