譜久山仁 の 第3診察室

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行きたいところ

 明治生まれの女性の方が入院されています。
90歳をこえてもしっかりとされていて、受け答えも全く問題なく、理論だったお話をされます。
ただ、お食事が食べられません。

 どうも、ご自分の身の回りのことがご自身でできず、ご主人のお世話もできないことが、自分自身で許されないようなのです。
そのため、生きようという意欲を持つことができず、食事を食べることを拒否されています。
 
 認知症もなく、ご家族の方とも笑顔でお話をされている姿を見ると、ご年齢のことを考えると十分なことができているように思えるのですが、ご本人にはそう思えないようです。



「先生、行きたいところがあるんやけど」
と、話しかけてこられました。

「どちらに行かれたいのですか?」
と、お尋ねすると、

「あの世」
とのお返事。

「あの世は、必ず行くことができますので、それまではご家族といい時間を過ごしましょうね。」
と、お答えしましたが、なかなか考えさせられるお返事でした。

これ以上生きることを望まれておらず、ご家族も良い意味で寛容で、ご本人さんのされたいようにしてもらったらいい、と考えておられます。

もちろん、自ら命を絶つ、 自殺、を支持するわけでは、ありません。

しかし、ご高齢になられ、するべきこともしてこられて、自分の体の衰えを感じられた方に、、点滴や経管栄養を使ってまで命をながらえる必要があるのか、と考えると、疑問に思ってしまいます。

ご自分で、安らかに逝きたい、と願われる方の自己決定権を重視し、その方の希望される行き方、亡くなり方をそっと見守る、というのも、医療には必要なのではないでしょうか。

安らかな最期を迎えていただけるような医療を提供していこうと思います。
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by fkymhts | 2005-10-24 20:56 | 医者と患者さん