譜久山仁 の 第3診察室

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カテゴリ:医者と患者さん( 132 )

グリーフケア

 今日、患者さんが亡くなりました。


 ご本人の、

そして、

ご家族のご希望通り、

一切の延命処置を行わずに。


今日は、ちょっとしんみりしたお話です。クリックしていただけると、うれしいです。

 癌の痛みを訴えておられましたが、麻薬の痛み止めがよく効き、

最近は痛みを訴えられることもありませんでした。


静かに息を引き取られた横で、ご家族は目に涙をたたえておられました。

朝早くから夜遅くまで、

そして、最後は一晩中、付き添っておられました。

僕の心にはぽっかりとすきまが空いています。

ご家族のお心のうちは、

察するにあまりあります。

 
そのようなご家族のかなしみを支えるケアが

グリーフケアです。


愛する人を失ったこと、

この事実は変わりませんが、

愛する人への最期のかかわりを、ご家族ご自身がどう思っておられるかで

気持ちの持ちようがずいぶんと変わります。



「ご本人も、ご家族も希望しておられたように、

苦しまず、尊厳を失うことなく、静かに息を引き取られましたね。

そして、ご自宅へ帰りたい、というご本人のご希望は、

残念ながらかないませんでしたが、

ご家族にずっと囲まれて過ごすことができたので、

ご本人にとってもご家族の温かみを感じておられたと思います。

長い間、ご本人はよくがんばられましたし、

ご家族もよく支えてこられました。

本当に、お疲れ様でした。」



ご家族が、心から満足して最期のときを振り返ることが出来ますように。
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by fkymhts | 2007-08-02 21:44 | 医者と患者さん

地域医療連携室

って、ご存知ですか?


今日は、地域医療のネットワークのお話です。クリックしていただけると、うれしいです。

それぞれの地域で、

病院と、
診療所や病院などの医療機関、
老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護福祉施設との
橋渡し(連携)をしてくれる部署のことです。

譜久山病院でも、
メディカルソーシャルワーカー(MSW)の方が、
ほかの医療、福祉施設などの連携のために、
日々頑張ってくれています。

今日は、そのMSWの方に、とても助けていただきました。


譜久山病院で治療できない病気の患者さんがおられるとき、

ほかの専門医療機関に紹介、転院していただかないといけなくなります。


その時に、転院での治療を受けてくれるかを、どの先生に相談をしたらいいのか。

これが、実は大変難しい問題になることがあるのです。


他の病院だけに、どんな先生が相談に乗っていただけるかが、よく分からないのです。


そのような時に、地域医療連携室を通じてご相談すると、

先方の病院のMSWの方に連絡を取っていただくことができ、

医者は病気のことについて、集中的に相談をすることができるのです。


今日は、まさに、専門病院での治療を必要とする患者さんがおられたので、

MSWさんに連絡を調整していただき、

先方の先生に病状についてじっくりとご相談することができ、

無事、転院、専門治療を受けることができるようになりました。


一人の医者、

ひとつの医療機関ができることには、

限界があります。


その地域のほかの医療機関と連携を取って、

その患者さんにとって最も良いと考えられる医療を提供する。


そして、医者が治療に専念するためにも、

その連携を支えてくれる

地域医療連携室 と メディカルソーシャルワーカーさんは、

なくてはならない存在なのです。


今日は、本当に、助かりました。

ありがとうございました。
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by fkymhts | 2007-08-01 22:01 | 医者と患者さん

往診

 今日は、2週間に1回の往診でした。

ご自宅へ伺うと、
「先生、お忙しい中、いつもありがとうございます。」
との言葉で迎えていただきました。

待ってくれている人がいる、というのは、医者冥利に尽きます。


今日は、ちょっと考えていただきたいお話です。クリックしていただけると、うれしいです。



「もう何も出来ないのに、そろそろお迎えが来てもええんやないか、と思って。」


「いえいえ、お元気で過ごされているだけでいいんですよ。
これまで十分なことをなさってきているんですから。」


その人の、今、だけを見ると、
確かに、何も出来ていない、と思われるのかもしれません。

でも、
その人の来し方に、たくさんの人とのかかわりがあり、
たくさんのことをして来られていると思うのです。

その人ががんばってこられたから、
その人に続く人たちがいる。

そうして、その人を中心に、人の輪、社会が作られてきているのだと
思うのです。

今、だけを見るのではなく、
その人の来し方を重んじること。

それが、年長者を敬うことであり、
そして、回りまわって、自分に返ってくることでもあります。


ご高齢の方が、望まれる場所で、生きいきと暮らすことが出来る地域。
そんな地域づくりを、医療面からサポートしていきたいです。
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by fkymhts | 2007-07-26 21:24 | 医者と患者さん

上を向いて

 一人の患者さんが、亡くなろうとしています。

その方のご家族に、

終末期医療についてのご相談をしました。


今日は、ちょっとずっしりとくるお話です。クリックしていただけると、うれしいです。

 終末期医療。

病気の治療を目的とせず、病状が悪くなったときに
もっと、具体的にいうと、
血圧が下がったり、呼吸が止まったり、心臓が止まったときに、
どの様な治療を希望されるか。

 入院直後、癌の終末期状態の患者さんには、終末期医療についてのお話をするのですが、
時間がたつにつれて、ご意見が変わることがあります。

 まだお元気だったときに「延命治療は希望しません。」と言われていても、
ご家族の死が実際に目の前に近づいてくると、ご意見が変わる。
これは、自然なことだと思いますし、
ご意見が変わっていないかどうかは必ずお尋ねするようにしています。

 そのご家族に、
「今晩中に、容態が悪くなって、亡くなられるかもしれません。」
と、お話しすると、

 上を向いて、
じっと、考え込まれました。
まるで、涙がこぼれないように。

 そして、
「先生、少し、お時間を頂いてよろしいですか。」

「どうぞ、どうぞ。」

 
 20分ほど、ご家族でお話をされたのでしょう。

「このまま、酸素マスクだけして下さい。

呼吸を助けるための管を入れたり、機械につないだりはしないでください。

父のそういう姿は見たくないですし、本人も希望しないと思います。」

 と、お返事をいただきました。


 その人にとって、

その人のご家族にとって、

どのような最期がふさわしいか。


 これは、医者が決められる問題ではありません。

そして、正しい答えも、ありません。


 じっと、上を向いて。

その患者さんが、どう希望されるか。

そして、ご家族として、どう希望されるか。

しっかりと考えられた、その答えが、

ただひとつの答えだと思います。
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by fkymhts | 2007-07-25 23:52 | 医者と患者さん

治療の値段

 救急車で交通事故にあった男の子が運ばれてきました。
男の子、といっても、まだ未成年というだけで、ハイティーンです。


今日は、ちょっと悲しくなってしまいました。クリックしていただけると、うれしいです。

 あちこちにすり傷があり、打ち身もあったので、
レントゲン検査をして、骨折がないことを確認。
すり傷の治療をしました。

 キズに泥が入っていたので、できるだけキレイに取り除き、
化膿する危険性があったので、
「化膿止めを出しておきましょうね。」
といったところ、
「お金がないので、薬はいいです。」
とのこと。

 そして、
それまでにした処置も、
「これって、お金かかるんですか?」

 唖然としてしまいました。

 医療は、もちろん算術であってはいけないけれども、
医療を受けるにはお金がかかります。

 救急車で運ばれてきた患者さんに対して、
「お金がかかりますが、治療を受けますか?」
などとたずねて治療を行うことは、考えられません。

 諸外国と比べると、はるかに低価格で、アクセスのよい日本の医療に、
麻痺してしまっているのでしょうか。

 グチは言いたくないですし、
プラスにならないことは口にしたくもありません。

 でも、
自分の身体に必要な医療を受けない、
もしくは、医療者に責任を持った治療をさせない、
のだったら、
病院に来ること自体が、間違っているように思えるのです。

 事故があると、すぐに救急車で病院に運んでもらえ、
待合室で待っている患者さんより優先的に診察を受けることができる。

これは、あくまで、緊急性が高い病状にのみ、許されることなのです。

善意の救急医療体制が、
その重みが理解できない人を助長することになってしまい、
かえって、あだになってしまう。

そんな、悲しいことを考えてしまいました。
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by fkymhts | 2007-07-24 22:52 | 医者と患者さん

フォロー

 自分のことじゃないのに、なんとなくフォローしてしまう、

って、ありませんか?


今日は、肩の力を抜いて、ちょこっと雑談です。
クリックしていただけると、うれしいです。


EDの患者さんにお薬を出す際に、

「いや、ちょっと、最近、お体の調子が悪いらしくて、奥さんからのプレッシャーがあるみたいで…」

と、言い訳がましく

「正当な使用方法なんだよ」とフォローしてしまったり。


別に、自分のことではないんですが、

どうしても、患者さんには感情移入してしまうところがあって。


ああ、この人がこんな風に思われると、いやだな、

と、知らず知らずの内に、フォローしてしまうんです。


もっと、ドライにいけたら、さっぱりとしていいのかもしれませんが、

どうしても乾燥しがちなこの世の中、

すこしウェットなぐらいで、ちょうど良いのでは、

と、自分を納得させています。
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by fkymhts | 2007-07-08 22:34 | 医者と患者さん

むかしの人

 「最近、足がだるくてだるくて。

主人の介護をしないといけないんですが、思うように足が動かないんです。

床に座るのではなく、椅子に座るようになったのがいけないんでしょうかねぇ。」



今日は、ちょっとなごみ系です。
クリックしていただけると、うれしいです。


 往診でNさんを診察した後、Nさんの奥さんが困ったように言われました。


「むかしの人は、わたしの知っている明治以前の人たちはもっと足がしっかりとしていたんですが…。」


Nさんの奥さんは86歳。

Nさんは91歳。


立派に老老介護をされています。


往診でその人が主(あるじ)として生活されている姿を見させていただくのは、

医療者としての楽しみの一つです。


それにしても、

むかしの人、が、明治の人になるんですから、

年季が入っています。


いつまでも、ご夫婦そろって、お元気でいられますように。
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by fkymhts | 2007-06-28 22:16 | 医者と患者さん

いのち

 「何があっても、いのちまではとられないだろう」

 「いのちに代えても」

というくらい、すべてのものの中で、もっとも大切なものとされる、

いのち。


その、いのちにかかわることが多いのが、医療です。


クリックしていただくと、うれしいです。

どんなに、病院に長くいないといけなくても、

どんなに、夜中だろうが早朝だろうが、時間かまわず電話がかかってきても、

どんなに、患者さんの病気のことで頭を悩ませても、


「おかげで、いのちが助かりました。」

という言葉で、報いられます。


そう、

僕がいのちを助けるのではありません。

僕が何らかの形でいのちが助かるのにかかわった、のだと思います。


でも、

どんな形であれ、

すべてのものの中で、もっとも大切なものとされる、

いのち、が助かるのにかかわることができる。



どんなに日々の業務が大変でも、

この尊いことを職業とできるのは、

幸せだと思います。



すこしでも多くの人のいのちが、

すこしでもしあわせに、ながらえますように。
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by fkymhts | 2007-06-26 23:03 | 医者と患者さん

腕 と こころ

「この病院には、いい機械があるから。」


「いえいえ、お母さん、ちがうのよ。

先生の腕がいいのよ。」


なんとも、面映い気持ちで、その場からそっと抜け出したいような気になってしまいました。


胃カメラで、吐血の原因を検査したときのこと。

通りいっぺん、食道も、胃の中も、十二指腸も見てみましたが、出血しているところはありません。

おかしい。

でも、どこか、出血しているところがあるはず。


十二指腸にもう一回カメラを入れてみると、

普段はあまり潰瘍ができない、十二指腸のすこし奥まったところ。

カメラがするっと抜けてしまって、見落としがちなところに潰瘍がありました。


潰瘍の治療を始め、患者さんとその娘さんに検査結果をご説明しました。



譜久山病院の機械がいいわけではありません。

まして、僕の腕がいいわけではありません。


ただ、

どうしてもこの人を良くしたい、

という こころ が、

おかしい、というヒントをくれました。



一人ひとりの患者さんの

一つひとつの検査、治療。


その一つひとつをうまくいくようにする

こころ、

大切にしたいです。
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by fkymhts | 2007-06-14 21:44 | 医者と患者さん

ぽっかり


空いた、心のすきま。


朝に、昼に、夜に、

一番気になって診察に行っていたベッドも、

ぽっかりと空いています。


患者さんががんばれば、

医療者もがんばれば、がんばるほど、

ぽっかりと空いたすきまは、

大きくなります。



どうしたら、救えたんだろう。

やれることは、すべて、した。


それでも、救えなかった命に、

自分の力不足を感じます。


ぽっかりと空いた心のすきま。


満たしてくれるのは、

それでも感謝してくださるご家族の

「ありがとうございました。」

という言葉 

です。


ご家族の心のすきまも、

大きいでしょうに。
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by fkymhts | 2007-06-08 02:53 | 医者と患者さん