譜久山仁 の 第3診察室

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「魔法」

 「魔法が起こったの。
痛かったのが、こんなに楽になるなんて。」

 1週間前に、訪問看護師さんから
「お腹の痛みがとても強いと言われています。」と新幹線の中で電話を受け、
「1時間で病院に戻りますから、来てもらってください。」と緊急入院となった患者さん。

 がんの終末期で、非常に厳しい状態。
お腹はどこを押さえても痛む。
CTでは腸に穴が空いて漏れたと考えられる空気が写っていました。
おそらく、下部消化管穿孔。
元気な人ならば緊急手術で救命できますが、手術ができない場合は数日以内に亡くなることが多い、大変重篤な状態です。

それまでは、
「できるだけ家で過ごしたいので、入院はしたくない。」
と、しんどい体をおしての外来治療と訪問看護で診ていました。
段々と状態が悪くなっていくのを、ご本人もご家族も覚悟はされていましたが、
あまりにも突然の急変。

消化管穿孔であることを伝えて、
ご本人には、「命に関わります。」
ご家族には、「今日中に亡くなるかもしれない覚悟が必要です。」
と説明しました。

何はともあれ、まずは痛みを取らないと。
患者さんは苦痛で眉根をひそめ、呼吸は早く粗い。
モルヒネの注射を開始し、まずは早送りをしても痛みが取れない。
もう1回早送り、「まだ痛い。」
もう2回、「まだ痛い。」
量を増やして、早送り...
と続けて、ようやく呼吸が穏やかになってきました。

「痛みが落ち着いたようなので、これで様子を見ましょう。」
とご本人に声をかけ、
廊下に出てこられたご家族には
「痛みはモルヒネでコントロールして、腹膜炎は抗生剤での治療をしますが、非常に厳しい状態です。」とご説明して、夜中に呼ばれることも覚悟していました。

翌日の日曜日、翌々日の月曜日と、日を重ねるごとに症状が楽になり、
火曜日。
心理カウンセラーがお部屋に伺った時に
「魔法が起こったの」

それから、4日間。
「魔法」で痛みが取れた身体で周りの方にたくさんの感謝を伝えられました。
急変に動揺されていたご家族でしたが、病室に寝泊まりして同じ時間を過ごされることで現実を徐々に受け入れられました。
起きて居られる時間が段々と短くなり、言葉数が減り、話しかけに対してうなずかれるだけになり...

ご家族が穏やかに見守られる中、息を引き取られました。
ご入院されたちょうど1週間後でした。

「魔法」
どんな苦しい状態でも、そう言って感謝できるあなたの心が、
みんなに魔法を見せてくれたのでしょう。

今の僕は魔法が解けて虚ろな状態ですが、
ひと休みして、あなたが見せてくれた魔法をこころに、
がんで困っておられる方の支えになれるようにがんばりますね。
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by fkymhts | 2016-03-31 16:39 | 病気のこばなし

患者さんに役立ち、医療者にやりがいがある 緩和ケア

緩和ケアでは、
医療者が患者さんを管理しようと思うと苦しい。
患者さんが病気の経過をリセットできると考えていると、受け容れができない。

医療者、患者さんの双方にとって幸せを目指すためには、
医療者が経験や知識から患者さんの経過を予測し、
患者さんの人となりを理解した心でそれを説明し、
患者さんの受け止めを共感的立場で傾聴すること。
そして、患者さんが望む生き方をチームで支えること。

なんとなく、こんなことが見えてきました。
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by fkymhts | 2016-03-23 16:17